しらいしファームは、崎みかんという小さな産地を再生しながら、WWOOFを通じて全国・世界から訪れる人たちと、言葉にしきれないものをやり取りする場所です。畑は、作物だけでなく、人と人の縁を育てています。
海士町の南端、崎地区はかつてみかんの産地として親しまれていましたが、時代とともに担い手を失っていきました。しらいしファームは、この「崎みかん」を絶やさずに次へつなぐことを出発点に始まりました。
2013年に苗木を育て、2014年に定植。地域おこし協力隊として畑に通い続け、2018年11月に初めての出荷にこぎつけました。今では崎地区だけでなく海士町内の複数の畑で、みかんと季節の野菜を育てています。
食べるものと、暮らす場所を切り離さない。それが、この島でみかんをつくる理由です。
「なぜ、この島根で、みかんなのか」――きっかけは、そんな素朴な疑問でした。代表・白石宗久は、もともと農家の生まれではありません。京都の半導体メーカーに約20年勤めたのち、家族の縁で海士町へ移り住み、その疑問に惹かれるようにして、農業未経験からこの畑を始めました。
WWOOFを始めたのも、最初から決めていたことではありませんでした。ある日たまたま我が家に来てくれたWWOOFerさんが、飲み会の翌朝、段ボールの切れ端に「WWOOF ぜったい」と書き残していってくれたこと――それがなければ、今の自分はなかったと思います。
小さな違和感や気づきが、少しずつ形を変えながら今につながってきました。器用に計画してきたわけではなく、その場その場で選び取ってきた結果が、今のしらいしファームです。
思い悩み、苦しみながらも、生きてきた結果が今の自分だと思っています。これから先も、きっと色々な苦悩が待ち受けているはずです。それでも、その一つひとつが、人生の糧になっていくと信じています。
玄関には、大きな酒器が一つ置いてあります。直径二十センチ、深さ十センチほどの、お椀のような形をした器で、表には「宗久」と絵付けしてあります。陶芸が趣味だった婆ちゃんが、自分の手で焼いてくれたものです。
子どもの頃は、これが何のためのものか分かりませんでした。「なにこれ、婆ちゃん何に使うの」――正直、そのくらいにしか思っていませんでした。
今は、なんとなく分かる気がしています。自分の想いが形になって現れたなら、それを誰かに分けてあげなさい。婆ちゃんは、そう言いたかったのかもしれません。
今はもう酒を注ぐことはなく、ハンコ入れとして使っています。それでも、これは私にとって、何より大切な宝物です。
器は、満たすためだけにあるんじゃない。誰かに分けるためにあるのかもしれない。
しらいしファームには、国内外からWWOOFerが訪れます。草取りや収穫、出荷の手伝いを通じて農業を知ってもらうのが表向きですが、本当に起きているのは別のことだと感じています。
数日、あるいは数週間、同じ食卓を囲み、同じ畑に立つ。多くを説明しなくても伝わるものがある一方で、次の便で、その人は島を出ていきます。出会いには必ず別れがついてくる。そのくり返しの中で、言葉にならない以心伝心が生まれる瞬間があります。
畑の一角では、自給自足を支える野菜も育てています。ある時に来てくれたWWOOFerさんが蒔いた種を、次に訪れた別のWWOOFerさんが収穫し、自然の恵みとしてありがたくいただく。顔を合わせたことのない者同士が、土を介してつながっていく――しらいしファームは、そんな小さな循環型農業を実践する場でもあります。
畑という環境を用意すること。あとは、そこで何が育つかを急かさずに見守ること。それが、しらいしファームのWWOOFへの向き合い方です。
畑を中心に、人が近づき、しばらくとどまり、また離れていく。その軌道がしらいしファームの時間です。
環境が変わっても、失敗しても、人との出会いによって根を張りなおしていく。白石自身の人生から生まれた考え方です。
食べるものと暮らす場所を切り離さない。畑の仕事は、島の暮らしそのものだと考えています。
一度訪れた人と、その後もゆるやかにつながり続ける。海士町との関わりしろを増やしていく試みです。
滞在をご希望の方は、WWOOF JAPAN に会員登録のうえ、しらいしファームのページからご連絡ください。
しらいしファームが目指しているのは、白石ひとりが農業を続けることではありません。WWOOFをきっかけに海士町を知った人が、いつかこの土地で何かを引き継いでいく。そんな循環をつくることです。
訳あって出荷しきれないみかんを、農業に関わる人たちの視点で新しい形に変えていく――それは、あくまで一つのきっかけづくりです。
大きな産地ではないからこそ、この土地で、この一瞬に生まれてきたみかんを、余すことなく活かしたい。売って終わりではなく、人と人とのご縁を大切にしながら、顔の見える関係の中で届けていきたい。それが、しらいしファームの切なる願いです。
そうした一つひとつの試みの先に、自分の看板がなくても地域の営みが続いていく状態をつくりたいと考えています。
畑 → 出会い → 関係人口 → 次の担い手へ。ゆっくりとした循環をつくっています。
畑から、直接お届けします。崎地区の小さな畑で育ったみかんを、数量限定でお分けしています。ご注文の受付は11月1日(日)から。出荷は11月中旬以降、収穫の進み具合に合わせて順次お送りします。
FAX注文書をご希望の方は、メールでお気軽にお知らせください。PDFでお送りします。
しらいしファームが大切にしているのは、人と人とのご縁をつなげていくことです。崎という小さな地区で過ごした時間は、訪れてくれた人の中に、きっと大きな記憶として刻まれていきます。そこから生まれる新しいつながりが、小さな世界の始まりとなり、また新しい物語を生んでいく――そんなきっかけになれたらと願っています。崎みかんのお問い合わせや、WWOOFでの滞在に関するご相談は、下記からお気軽にご連絡ください。